愛すと殺すと


キーンコーンと予鈴が鳴る。


あと二階でHRだ。



「千晶、そろそろ行かなきゃ」

「うん!」

「あとその電マは置いといてね」


「うん…え?」


なんで?としきりに繰り返しながら、電マを渋々文机に置く。


「あ、あと」


そうだ、と抱えてきたカフェオレを渡す。


「好みわかんないから、王道で」


「え?…あ、あぁ」


戸惑う彼女は放って、早くいかねば間に合わない。


「千晶、行くよ!」


「え、待って陽ぉ!」



階段をかけ上がると、ズキンと腕が微かに痛む。


「どうかした?」

「いや…」


たぶん、あのヤンデレは不安感だったのでは、と推測する。

気持ちに気付かず、いまいち好きとははっきり言えてなかった俺に、消えるのではと不安を抱いた千晶。


それが繋がったのではないか、と個人的に思う。



「千晶は何も悪くないんだよ」



言い聞かせるようにして。



また、頭を撫でた。



「陽ー、死なないでね?」


「あぁ、死なない。

千晶を一人にするのが、今は怖くて嫌だから」


愛を自覚したから――なんて、柄にもなくかっこいいことをいって。



「じゃあね」


「…う、うん」



隣の教室にそれぞれ入っていった。
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