愛すと殺すと


「行って、陽くんに会ってくる」

「おっ」

ドアに手をかけて、ガラガラと引く。


「で、今度こそ取り返す。

先生は役立たずだってわかったよ」


「おまっ…色々最低だなぁっ!」


にや、と妖しく彼女は笑って。


「じゃ」


カバンを持って、ピシャリと閉めていってしまった。


暇なので石橋にメールを打つと、

『やっぱりな』

と来た。


あぁ、なんだ

第三者からは布留が菅原にベタぼれなのを察していたのか。


「…あーあ」


近くにいたのに気づかなかったなんて、むなしくなる。

まあ感謝されたのは嬉しかったけど、ね。



その日の帰りにたまたま自販機の前で美澤に会った。


「…違うの、えっと…カフェオレ嫌いだから、緑茶にね?」


しどろもどろなのは、なぜかカバンにあのカフェオレが入ってるのに緑茶を購入してたから。


「お、大事に保管とか?」


「うるさい役立たずっ!」


緑茶を投げつけて逃げていってしまった。

…カフェオレ嫌いなら、そっち投げればいいのに、なんて。


踏み潰された早咲きの蒲公英を見ながら、にやけた。


< 142 / 245 >

この作品をシェア

pagetop