愛すと殺すと

なんともわかりやすい説明をしてくれたものだ。

私立宝珠学園の寮というから、とりあえず学校に向かう。

が。

学校はさすがにバレるかな、と神社で待つことにした。


裏門の目の前にある神社の境内に隠れ、校門から出てくる人達に目を凝らす。


お兄ちゃん、千晶ちゃん、ほうきくん。


そして、あとから気づいた。


「(寮生活ならお兄ちゃんたち校門から出ないじゃないですか…!)」


やってしまった。

だから私はご主人様にバカバカ言われるんだ。


はぁ、とため息をつくと、腫れ上がった太ももが目についた。


痛いなぁ…なんて。


「ご主人様ぁ…」


一番会いたいのはお兄ちゃんたちのはずなのに、なぜかご主人様を呼んだ。

なんだか、眠いや。



夜が更けていた。



寒くて怖くなってきた。

やっぱり屋敷に帰ろうか、そう思って境内の扉を開ける。

と。

さくさくと歩いてくる人影が見えた。


めんどくさそうな、でも優しい瞳。

真面目な黒髪で、パーカー+ジーンズ。

素っ気ない彼は、一発でわかった。


「お兄ちゃぁああああんんん」


走った。

無我夢中で。


『幸せになってみせるよ』


そう言って別れたお兄ちゃんに。

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