愛すと殺すと
◇◇◇
目の前には、ほくほくの肉じゃ。
炊きたてご飯にお味噌汁。
キュウリの浅漬けと、ホッケの塩焼き。
「……」
呆然としている私。
「肉じゃが!」
千晶ちゃんが尻尾をふって感想をのべた。
「先生に人参もらったんだよ」
「なんで?」
「さあ?…メイ、どした?ごめん…お茶碗ないからって平皿にしたのが不服だった?」
「ち、違うです…
平皿ご飯なのはいつものこととして、和食が、その、すっごい久しぶりで…」
うるっ、と涙が溢れそうだ。
だめだ、堪えろ私。
「和食が久しぶり?」
「ご主人様が外国人なので、大抵ご飯は洋食でぇ…
前頼み込んで出してもらったお米も平皿でフォークだし、ひくっ…
お味噌汁って言ったらなぜかコンポタがでてきて、お魚といえばムニエルとかカルパッチョとかで横文字ばっかで、塩焼きとかなくてっ…」
うぅ、炊きたてのご飯が懐かしい。
「ねー陽、カルパッチョって何?」
「今度作ってやるから。
なあメイ、お茶碗使うか?」
「いいのですか!?」
「どうぞ」
お兄ちゃんが青色のお茶碗を差し出してくれる。
「平皿…」
「猫ちゃんみたいだねー」
千晶ちゃんがよくわからないことを言っている。