愛すと殺すと
「メイは?」
「め、いは……全部、です…」
わざと反対側を向いた。
別れには泣かなかったのに、変なの。
お布団濡らしちゃうです、ごめんなさい。
「まず、お兄ちゃんに会えました。で、千晶ちゃんも笑ってました。あとご飯がものすごく美味しくて、甘くて、あたたかかったです…ご主人様の優しさもわかったですし、なにしろ」
なにしろ――
「変わってないのが、すっごくすっごく幸せです…」
声が震えたからバレたかな。
でもいいや、お兄ちゃんと千晶ちゃんだし。
「メイだって変わってないよ」
「変わっちゃいましたよ、メイは。だって…」
言葉を続けようとして、また頭を撫でられた。
「おっきくなっただけだよ、千晶たちは」
どこか大人っぽく、子供な声で。
「幸せを見つけるのは、満たすためでしょ?まだ千晶たちは空っぽなんだ、空きがあるんだ――だから、幸せが見つけられるの」
がさごそと音がして、お兄ちゃんに抱きついたのがわかる。
「千晶は陽を手に入れたの。でも満たされない、幸せが目につく。それは変わってないってことなんじゃないのかなー?」