愛すと殺すと

「千晶がね、俺を手にいれちゃったんだ」


「…は?」


何を言ってるのかわからない。




「あ、ごめん。言い方が悪かった。

俺さ、千晶のこと恋愛対象として見てなかったんだ、付き合ってたのに」



「え?」


付き合う=好きあってる、じゃないの?

よくわからずにはてなマークに思考を乗っ取られた私に、クスクスと苦笑しながら。


「千晶が好き好きーってゆーから、付き合ってたんだ。

拒む理由もないし、なにしろ千晶を救いたかったし」


「……そんなの、千晶ちゃんが可哀想じゃないですか」


一方通行の愛なんて哀れなだけ。

愛する人が笑ってるのを見たいから愛すのに。


「そうだな、可哀想だった」


悲しそうに苦笑し、自嘲ぎみに頭を抑える。


「でも気持ちに気づいてから、千晶は満たされて貪欲になった」


人は幸せを求め続ける。

満たされれば満たされるだけ、求める。


「……お兄ちゃんは、幸せだったんですね」


だから空虚感が生まれたんだ。
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