愛すと殺すと
パタパタと走りよってきた。
「布留くんだよね?」
頂点でお団子にした今時風の女の子。
化粧の匂いが嫌悪感を誘う。
「は、はい」
動揺しつつ答える。
「みいー!布留くんだったよ、やっぱりー!」
みい?
猫でもいるのか?
「しっ…しぃー!
だめだってば帆音ちゃん…」
柱に隠れてる女の子がもう一人。
たぶんそいつが『みい』だろう。
「あ、その子が噂の子?」
その『みい』でない方の女は、俺の横の千晶を見やる。
「噂?」
「ラブラブなんでしょ?」
まあ、それなりには。
「……」
他人が嫌いな千晶は、俺の腕を掴んで縮こまる。
何気に包帯に当たっていたいんだけど。
「…あの、何のようでしょうか」
「ハハハ、いやあーだなー!布留くんは堅いのかな?」
「は?」
馴れ馴れしい。
嫌悪感しかない。
「一緒に遊ばない?」
「あ…遊びま、せん」
隣でコロコロ、小さい音が転がる。
千晶の声だ。
「よ、陽は、千晶とデートして…るんです」
千晶にしてはよく頑張った。
「…向こうに、行っててもらえますか?」
必死に健気に言葉を紡ぐ。