愛すと殺すと
「律儀、さっすがは清純」
にやにや気持ち悪い笑みを浮かべながら、階段を降りてくる。
「…美澤さぁ、彼氏いないんでしょ?俺立候補していい?」
「あの、えっ…」
手を伸ばして、私の頬にふれてくる。
キスを誘うような、うっとりとした笑み。
ながい指が頬に絡まって、一気に雰囲気を妖しいものに引き継ぐ。
その時になって、合点がいった。
綺麗な顔立ちをしている。
チャラさが先走ってよく見なかったけれど、普通にかっこいい。
これなら処女狩りも無理な話じゃない。
ちょっと甘い言葉を囁いて、キスでもすれば一発だ。
普通の女子ならときめいてしまう、が。
――やっぱり、私は思ってしまう。
気持ち悪い、吐き気がする、と。
その手、その足、その体。
全部が全部、気持ち悪い。
「…ご、ごめんなさいっ…」
「え?ダメ?」
こくん、とうなずくと、そっかそっかと意外にもあっさりと引き下がった。
手も離れたけど、そこが汚れた気がした。