愛すと殺すと
「…ずいぶん独占欲強いんだね」
つまんなさそうに。
「そんなんじゃ布留くん、とられちゃうよ」
「そんな訳ありません。陽は千晶のものです」
「あっそー」
イライラしてるのが目に見えてわかった。
『みい』の方へ帰っていく。
そして俺は――
「ちょっ…千晶?」
無言で引きずられていた。
何を話しかけても無視されて。
ただただ引きずられていた。
ガンッと目の前の手鏡が、公衆電話に叩きつけられる。
物陰に引きずられた俺は、その光景を見ているしかなかった。
狂ったように叩きつけ、とうとう手鏡が割れる。
その欠片の一番大きいのをとって。
「っ…」
先を俺の喉元に突き付けた。
あら不思議、手鏡も凶器に早変わり。
「ねえ、陽」
低く音を放つ。
ぞくりと背筋が逆立つ。
「陽はあの化粧女が好きなの?」
「…いや」
「じゃああの猫女?」
「…違う」
くっ、と欠片を握る手に力が入る。
「じゃあっ…何あの女!
布留くんなんて呼んで!」
必死の形相で怒鳴る。
そこで気づいたように。
「…好きな人が出来たら、陽が死んじゃう…」
間違った解釈を正しいと思い込んでいる。