愛すと殺すと
――結局、今日はやらなかった。
彼を満足させてかえってもらった。
さすがに不服そうだったけど、まあいい。
とりあえず、私はいつもの作業に移る。
彼が触れたシーツを洗濯機にぶちこみ、コップから棚、すべてを拭く。
ついでに学生鞄も洗おうと一緒にぶちこんだ。このために水洗い可のやつにした私。
最後に、一番汚いものを洗う。
「…っ、ぃ…」
涙が滲むほど、強く。
「…くっ……ぅ」
血でタオルが染まるほど、荒く。
己の体を擦って擦って擦って。
シャワーを流し続けて、もう30分は経つだろう。
それでもまだ汚いと、擦り続ける。
「…くくくっ」
苦笑がもれた。
意味がわからない自嘲を含んだ笑いが、喉をくつくつとくすぐる。
流れるシャワーには紅が。
擦るのに用いるタオルには皮膚が。
体には数多のできたての傷が。
――滑稽だ。
「くく…く、くくっ」
あぁ本当に、
「汚いや…」