愛すと殺すと
それはあんただろ、そう思いながら。


「…今日は誰?」

「あ?あー…と、矢田」

「あぁ、あいつ」

「あんたは?」

「私はヤってない」

「え?シーツ洗ってあんじゃん」

「……ヤろうとしたけど、なんか冷めただけ」

「なに?小さかったとか?」

「…うるさい」



変な会話。


母親の浮気相手との情事を見たあと、母親は壊れた。

その前までは確かにいい親だった。
上品で、清楚で、趣味は主婦ですみたいなステオクだった。

なのに。


『バレちゃったか』


ニヤリと笑って、傷を負った私を慰めもせずに本性を表した。

浮気性で性悪女で、そして妖艶で、汚い本性を。


それから一ヶ月後、お母さんはお父さんと離婚した。



どうやら、私のお父さんじゃないみたいだけど。



で、今は毎日楽しく男を乗り換え浮気中、と。



「華恵「みぃって呼んで」


わざわざ遮って指摘した。


「……みぃ、」


「なに」


「あー…っと」



少し視線が宙を浮いた。



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