愛すと殺すと

やりきれない、というように頭を掻いて。



「お小遣いやろっか」


「なんで?」



不審だった。


私には毎月毎月お小遣いを多目に渡してくる。


家庭内別居。


家で料理はおろか家事も選択もしない。


だから食材を自分で買って、調理して生活しているのだけど。



「今月はもらったよ?」


「でも、ほら、いるかなって。

暖かいコートでも買えよ」


「なん、で?」



優しいのが、怖い。



「いらないよ、いらない」



汚い人間からの優しさなんて。



「いらないから、本当に」



「そっか」


悲しそうに目を付せたお母さんが、印象的だった。


お弁当を包んでいると、矢田さんがきた。



「あ、みぃちゃん」

「…ども」



ぷい、とひねくれた私は顔を背けて。



学校へ。
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