愛すと殺すと
「嫌だ嫌だ!
陽がいないと生きていけない!
いつだって陽はそばにいたんだから、いなくならないで!」
「いなくならないよ」
宥めたくて、落ち着かせたくて。
「陽まで消えたら、千晶どうしたらいいの…?」
まるで聞こえてないようだった。
どんどん間合いがつまり、壁に追いやられる。
喉が――。
息がしづらい。
苦しい。
でも一番苦しいのは
「陽、大好き…」
千晶だ。
「お願い、いなくならないで」
「うん」
「大好きだから」
「あぁ」
「お兄ちゃんのところには行かないで」
がくがくと震えた手からは、紅い血が流れていた。
『お兄ちゃん』
あぁそうか。
千晶にはお兄ちゃんがいた。
“いた”
「大丈夫、お兄ちゃん見たいにはならねえから」
優しくあやす。
欠片を強く握りすぎて血が滴っている。
ぽた、ぽた、
床に落ちていく。
ガタガタ震えてる手を開くと、結構深く切っていた。
絆創膏も何もないので、仕方なくハンカチで止血。
そのころには震えは止まっていた。