愛すと殺すと
破片も、危なくないようにハンカチで包んだ。
そして千晶をあやしながら寮に連れていき、
焼そばをつくって夕食として食べた。
さすがにこの雰囲気と怪我で外食は嫌だ。
いつも喋ってるのは千晶だから、全く喋らない今日は会話が少ない食事となった。
「今日俺風呂入れねえんだけど、入る?」
「……」
だまって体育座りで踞る。
あぁまるで
昔みたいだ。
昔も何か辛いことがあったときは、終始無言だった。
ずっと俯いて何も喋らないで。
そんなときは、二人でめいっぱい笑って、釣られて笑うのを待った。
『まるで天岩戸だねえ』
『天の?』
『アマテラスって知ってるかい?千晶はまるでアマテラスだな』
物知りで、ちょっと古風なしゃべり方。
いつもニコニコ笑ってて、なんでも行動にすぐ移す正義感に溢れた人。
俺らは、そんな鳳紀(ほうき)が大好きだった。
だから、
無くした時はあり得なくて
絶対に信じなかった。
今でも思い出す。
不自然に曲がった体に、無数のアザ。
足が絶対に曲がらない方向に曲がっていて、顔がぼこぼこだった。
むせかえるような血の匂い。
そこにかすかにまざる、ラベンダーと鳳紀の香り。
そして無駄に可愛らしい蒲公英の絵。