愛すと殺すと
そのあと、いつものように部屋に布団を二枚敷いて二人で寝た。
べつにR指定なことはしていないけど。
千晶はただのヤキモチと不安でここまで荒れた。
今俺は、千晶が好きと言う自覚がない。
だからただの兄弟みたいなものだ。
もし、もし俺に好きな人ができたら。
たぶんその日が俺の寿命。
『千晶は女の子だ。
守る意味があるだろう』
昔、鳳紀が言った。
そうだね、女の子だ。
女の子だからすごく辛い目にあってきた。
売春行為。
『し』と『せ』と『つ』がつく場所で待っていたのは、それだった。
ロリコン専用の風俗。
大金の変わりにまだ年端もいかない子供を差し出す。
千晶は小さい頃から容姿がよかった。
だから、言い方は悪いが人気で。
すごくすごく辛い思いをしてきた。
売春行為は女だけではない。
数は少ないが、男子も当たり前のように売られる。
今でも思い出す。
気持ちいいのは向こうだけ。
タバコの香りと女の変な声。
ただただ耐えただけの、あの頃。
盛る気が起きない理由もわかるだろう。