愛すと殺すと
「はあ…」
隣ですやすや眠る千晶を見る。
ダメだ、全く盛らない。
てか盛ったことがない。
『し』と『せ』と『つ』がつく場所は最悪で。
思い出せば悪いことばかり。
でも俺らは幸せを必死に探して生きていた。
毎晩かかさず行っていた、『幸せ報告会』
布団も何も与えられないから、近所で拾ってきた毛布を、当時いた四人でわけあう。
中でひそひそ
今日見つけた『いいこと』を話し合う。
『今日千晶ね、知らない人からアメをもらったの』
『俺は10円拾った』
『鰯雲があったよ。秋だねえ』
『見てみて!綺麗な落ち葉拾ったの!』
二人になった今は、いつの間にかしなくなった。
なんだろう、この空虚感。
辛いことばかりだったのに、楽しかったように思える。
毎日飢えを心配して、性欲処理の相手をさせられる。
そんな辛さと罵倒と暴力の嵐の中で、必死に探してた幸せ。
それが無くなった今、穴の空いた心から寂しい気持ちが溢れてくる
「復活…させよっかな」
二人で幸せを見つけようか。
そしたら少しは、この寂しさもなくなるかもしれない。