愛すと殺すと


納得していると、笑われた。


黒庵さんに。


「餓鬼、お前自分のこと本当にわかってねーな」


じわりと怒りが沸く。

んだよこいつムカつくな。

割り箸を投げつけようかと迷っていれば、先生が話を続けた。


「私たちは裏切んない。前にいったように、絶対に」


「…?」


「だから安心して聞いてくれ」



意味がわからないが、とりあえず耳を傾ける。

そして、先生は驚愕を口にした。




「手を切れ。お前の母親とな」




「なっ、」


「その人のそばにいたらお前はいつまでもダメなままだ」


確かに、それは思う。

私はいつまでも愛されない。

いつまでも汚さから逃げられない。


でも、親子だし。


どうやったら手を切れるかなんて、わからない。



「…親権を捨てさせる」



「どうやって、」


「拒否したらお前は愛されてることになるし、うなずいたらそれまでだ。ついでに言えば、次の保護責任者はもうこちらで用意してる。大丈夫、ちゃんとした野郎だから」


そして、先生は笑って。


「そいつと“子供”をやり直せ」


また、唐揚げに箸をつけた。




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