愛すと殺すと
「……?」
制服が違うからか不思議そうに僕を見て、去ろうとする少女。
一一逃がしていけない。
僕の何かがそう叫んで、気がついたら声を発していた。
「…まっ、まってくれないか!」
シンとした廊下に響いた声。
ピクンと反応して、くるりとこちらを向いた。
「じ、実は僕は他校のものなんだが…その、迷ってしまって…トイレまで案内してくれないか?」
じっと不思議なものを見るような目で見られながら事情を話すと、彼女はくるりと元の位置に首を戻してしまって一一そのまま階段を降りてしまう。
ああ、だめだった。
落胆しながら後ろ姿を見つめていると、またピタリと止まって。
「…3階にはない。ついてきて」
シンとしているはずなのに、消えそうな声でそう言った。
「…!」
喜びでほころぶ。
もう少し、彼女といれるのだ。