愛すと殺すと
「料理中に包丁で刺しました」
虚言を口にする千晶。
言いたくないことがわかったから、適当に話をあわせておこう。
「そー。なんかズバッて」
「包丁握りしめたりしたの?」
確かに、掌にできてる傷なんだから不自然か。
「…いや、そーゆーわけじゃあ…」
「まあいいや。言いたくないんなら無理して言わなくても。
黙秘権ってものやプライバシーってものもあるし」
ご理解が早くて助かります。
「しっかし…あんたら絆創膏だけでどーにかしよーとする癖止めたら?」
「いや、絆創膏しかないですし」
「包帯買っとけ。よく怪我するんだから」
手際よくガーゼを貼っている先生は、愚痴を吐くように。
「あー…でも、菅原来てくれてよかった」
でも嬉しそうだった。
「会いたかったな」
「…私は、別に」
「布留しか来てくんねーんだもん」
「陽は私のです先生」
キッと睨むようにどうしようもないことを言う千晶。
おいおい…
「ぷっ」
案の定、先生は吹き出した。
「あはははっ…あんた、私が布留寝とるとでも?」
「だ、だって陽がよく先生んとこ行くから」
「それはあんたが怪我させてるからだよ」