愛すと殺すと
「っ」
山本先生の低い声。
千晶にはない、冷えた感じが背筋を凍らす。
「菅原、あんたが布留を好き好きゆーのは勝手だけどねえ
あんまり痛くない愛しかたにしたら?」
千晶は驚いたようだ。
俺が一言もそんなことを言ったことないからかな。
別にいいのだ、自分が死ぬことなんて。
そんなこと言わなくてもいいんだ、先生。
俺は自分より千晶を守らねばならない。
そういう人間(運命)なのだから。
遠い昔、千晶のために死んだものがいた。
『守ってくれ』
『愛してやってくれ』
この二つを遺言として、去った人がいた。
だから、次は俺が。
俺が千晶を――
「…先生はわからないんです、私が陽を愛すわけが」
人前では一人称が千晶から私に変わる千晶。
今の言い方だと、どこか他人っぽく見えた。
「…私はお兄ちゃんみたいにしたくないだけ」
「知ってるよ?知ってるけど。
布留はあーならないと思うなあ」
「その保証がありますか?」
「保証とかって問題じゃねーだろ」
「そーゆー問題なの」
「…菅原は、布留のことを考えたことあるか?」
俺?
そう言われて気づく。
俺――自分の人生や将来なんて考えたことなかった。
千晶のため千晶のためが先走って。
「布留は、自分を捨てかけてるんだ。菅原のために」
冷たく先生は結論を出した