愛すと殺すと
黒髪で、じゃっかん天パの髪を2つに結んでるその少女。

眼鏡の奥の素顔はよくわかんない。

瞳は濁った黒で、黒曜石みたいな千晶とは全く違う。


千晶とお揃いの制服を着ていて、紺のブレザーにはシワひとつない。



そして、俺はそいつの名前を知っている。



『みい』




そう呼ばれてる人だった。




「えと…?」


「…布留くん、昨日はごめんね…?」


なんか謝られた。


「彼女さんといるのに私達が話しかけちゃって…険悪なムードになっちゃったみたいだから、その…」


なるほどね。


「ご、ごめんなさいっ…」


おどおどきょどきょどしながら、バフッと頭を下げる。

揺れる黒髪。

舞うピンクのチェックのスカート。


「あー…」


さすがに、

千晶が荒れて鏡を壊して凶器に変身させて俺を殺そうとして、その怒りのあまり千晶の可愛らしい手が負傷して、保健室で女のバトル勃発してさっきすっごい甘えるようになった――


なんて言えない。


「あの…?」

「あ、なんでもないよ。
それよりさー、座ったらどう?もうチャイム鳴るよ」


キーンコーン。

あと一回でHRの時間だ。



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