愛すと殺すと
「は、華恵…って呼んでくらさい…うぅ…」
は?
訳わかんねえ。
なんで泣いてんの?
俺にはわからない。
千晶の心しかわからない。
「し、知らない…」
何が?
「布留くんなんて、もお知らないもん!」
敬語じゃなく叫んだ言葉は、離別の言葉。
パタパタと走りながら移動教室へ向かう。
意味がわからない。
なんで?
今の俺の発言になにか問題点があった?
なんで泣いてるの?
なんで逃げたの?
「…ま、どうでもいっか」
あぁそうだ、どうでもいいのだ。
俺としては勝手に向こうがなついて勝手に向こうが離れただけ。
ウザくなってきたところを離れてくれたのだ。
じゃっかんありがたい気がしてきたぞ。
なんの損得もなく、へんな時間が終わっただけだ。
謎でいっぱいの頭を残して。
あの人、なんで泣いたんだろ。
まあいっか。
俺の人生になにかの影響を残した訳でもなし。
俺は何事もなかったかのように、移動教室に向かった。