愛すと殺すと

「…なに?」


いい加減ウザくなってきた。

本から顔をあげて、人物を確認する。


『みい』こと美澤だった。


「あ!やっとこっち向いてくれたね?
もー、布留くんひどい」


今朝、よくわからない理由で泣いていた彼女は、至極普通だった。

…ちょっと怖いくらいに。


「なんで図書室なんかにいるの?」


お前にそれを言う必要あんのかよ。

なんて言ったらまた泣くかもしれないから、飲み込んだ。


「…千晶が、調べものしたいって」


そう言うと、少し目付きが変わった。

媚びるような目から、冷めたような目に。



「……?」


「あれ?じゃあ彼女さんは?」


「内緒だからって、向こうに」


「そっかあー」


かたん、許可もなく隣の椅子が引かれ、許可もなく座る。


少し不快感を覚えつつ、目で千晶を探した。


遠くの方の席でなにやら必死に調べている。

メモを取っていて、勉強らしい。


「私、図書委員なの」


大して興味のない話をし始めた。


「だから、昼休みはいつでもここにいるの」


「…へー」


とにかく興味がない。

< 46 / 245 >

この作品をシェア

pagetop