愛すと殺すと
「…なに?」
いい加減ウザくなってきた。
本から顔をあげて、人物を確認する。
『みい』こと美澤だった。
「あ!やっとこっち向いてくれたね?
もー、布留くんひどい」
今朝、よくわからない理由で泣いていた彼女は、至極普通だった。
…ちょっと怖いくらいに。
「なんで図書室なんかにいるの?」
お前にそれを言う必要あんのかよ。
なんて言ったらまた泣くかもしれないから、飲み込んだ。
「…千晶が、調べものしたいって」
そう言うと、少し目付きが変わった。
媚びるような目から、冷めたような目に。
「……?」
「あれ?じゃあ彼女さんは?」
「内緒だからって、向こうに」
「そっかあー」
かたん、許可もなく隣の椅子が引かれ、許可もなく座る。
少し不快感を覚えつつ、目で千晶を探した。
遠くの方の席でなにやら必死に調べている。
メモを取っていて、勉強らしい。
「私、図書委員なの」
大して興味のない話をし始めた。
「だから、昼休みはいつでもここにいるの」
「…へー」
とにかく興味がない。