愛すと殺すと
景色がドンドン変わり、図書室から同階のコピー室へ。
たくさんの本からたくさんの紙に変わった。
結構小さい部屋だから、二人だけでも狭い気がする。
「…っ」
千晶の壁どん。
俺より小さい手が顔の横にささる。
息がかかるほど近い顔は、ひどく妖艶だった。
「千晶」
「陽、あれこの間の猫女だよね?」
猫女…
「…隣に座ってた」
しゅん、項垂れる頭。
「なに、喋ってたの?」
「んー…図書委員らしい」
「だけ?」
「だけ」
ズンッと顔が近くなる。
鼻と鼻がもうつきそう。
「……忘れて」
千晶の薄い唇から放たれる言葉に、戸惑う。
わ、忘れて?
「千晶のこと以外の情報は、陽に必要ないもん。
猫女の情報なんて、消して。
だって嫌だもん。
猫女のこと考えてる陽なんて、消えちゃえ」
なんでそうなる!?
内心かなり驚きながら、コクコクと頷いておいた。
「猫女のことなんか考えたら陽、死んじゃうんだから」
「ちが…」
「ちがくない!陽だってお兄ちゃんが死んじゃったところ見たんでしょ!
陽がああなるのは嫌だ!」
不自然に折れた体に、濃厚な血とラベンダーの香り。