愛すと殺すと


ああなるのは嫌だって。


ああしようとしてるのは、千晶じゃねえか。


千晶は好き。

千晶は大事。


でも――




千晶のお兄ちゃん、鳳紀は、好きな人がいた。


違う中学の後輩――つまり、俺と同い年で。


とても聡明な人だったらしい。


だからこそ、汚い自分が嫌になったんだろう。



『陽!逃げるぞ!』

『え?鳳…』

『いいから!今しかチャンスはないんだ!千晶も、ついてきてくれ!』



2日間の外出予定があったアイツらが出ていったのを見計らって、俺らも『し』『せ』『つ』を出た。


蒲公英の鞄はここのトレードマーク。


その鞄にいっぱいの荷物を詰め、家を出た。




そして――鳳紀は死んだ。




俺らの目の前で。





結果的に、俺らは連れ戻された。

千晶にトラウマを植え付けて。



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