愛すと殺すと
「…千晶は、俺らが守るんだ」
「陽?」
不意に呟いた俺を不審な目で見たのは、鳳紀だった。
“千晶は女の子だから”
“守らねば”
――「陽っ」
千晶が駆け寄ってきた。
パトカーがファンファンなる音や、たくさんの人ゴミの中。
「千晶」
俺はそれを笑って受け止めた。
抱きついてくる千晶をよしよしと撫でる。
「陽っ!これで千晶たちは、自由になれるの?」
「さあ?それは――」
「お兄ちゃんは?」
兄が見当たらないのが不安らしく、きょろきょろと辺りを見回す。
その髪はやっぱりボサボサで、顔はアザに満ちていて。
軽く、唇を噛んだ。
「鳳紀は――」
そういえば、どこだろう。
電話がかかってきて、一緒に駆け出したのに。
いつの間に……
「…鳳紀は、このこと知らないからね。
たぶん飲み込めてなくて、動揺してんじゃない?」
「そっかあ、お兄ちゃんらしいね」
へへへ、と笑いながら俺を見上げる彼女は、とても異様だった。
隣には死体があるのだから。