愛すと殺すと
とある高級ホテルの一室で、それは起こった。
表向きは『自殺』。
裏はただの『殺害』が。
重なる迫害に憤怒した俺は、千晶にある小瓶を渡した。
『蒲公英園』では野菜の栽培をしていて、農薬も常備してあった。
それを使ったのだ。
そもそも『蒲公英園』とは孤児を引き取る民間施設で、マザーとファザーが運営している。
国からの供給と、『裏』で稼いだお金で、結構裕福だった。
表向きは農家を営んでいたのは、たぶん偽造のためだろう。
俺らは容赦なく畑につき出され、こつきまわされながら働いた。
だから、そう、簡単だったのだ。
農薬を手に入れることくらい。
『千晶、これを外人の飲み物に入れるんだ』
『うん、わかった陽』
外人は、性欲のためと金目当てで千晶を誘拐。
自責の念にかられ、手伝いをしていた千晶のポケットに入っていた農薬で、自殺。
多少無理矢理に思えるそれは、千晶の証言によるものだった。