愛すと殺すと
「いやぁあああああああああっ」
千晶の悲鳴が聞こえたのはリビングでだった。
「ど、どうした!?」
「行ってみよう」
いつも通りに農園にいた俺らは、急いで中に入った。
彼女は頭を抱えていて、力が抜けたように座り込んでいた。
「いやぁ…やっ、やだぁ……っひぃい……あぁあ…」
「千晶っ」
鳳紀がいつものように背中をさすろうと手を伸ばした。
パシッ
「っ…」
手を叩かれたのだ。
こんなこと、初めてだった。
千晶は鳳紀が大好きで、何があってもそれは絶対だった。
なのに、なのに。
「やめっ……触らな…で……」
ガチガチと歯がなるくらいに震えながら、身をこわばらせる。
「ごめ、なさ……おねがっ…許し……ひぃっ」
己の肩を抱き、何かに怯えたその姿。
異常だった。何もかもが。
「――原因はこれかっ…」
鳳紀の声に振り返ると、リモコンを手にしていた。
テレビでやっていた、洋楽の特集を消すために。