愛すと殺すと



「…はあ?何いってんのよ」



睨み付けられた恐怖に身をすくめながら、俺はその人に抗議した。


太って喉が潰れてるのか、少しくぐもった声が気持ち悪い。




「…千晶を病院に連れていって下さい、マザー」



「嫌だ」



赤いネイルを塗った指を動かしながら、俺らが稼いだ金で自分の服を買おうと、パソコンの前に座っているマザー。



着飾り、罵ることしか脳がない彼女は、俺の意見など耳にすらしなかった。




「…てゆーか、ねえ?あの外人の客――殺したの千晶でしょ」




肉に潰された目で俺を見た。


やっぱり、バレてたか。



「自分が殺した相手に怯えてる?何それ、おっかし。

呪われようが祟られようが、自業自得だろ」



「……」



小バカにしたような口調に、苛ついた。



お前に相談しても相手にしてくれなかったから動いたんだ。


なのにその言い方はなんだよ



「…マザーこそ、呪われろ」



思わず呪詛をぶつけた。


と。



金属製のペン立てが飛んできた。




「っ」


勢いよく頭にぶつかり、傷ができて血が流れる生暖かい感触がした。


そしてそこをぐりぐりと足で詰られ、そこでようやく痛みがわいた。


「…っい」


「なめんなよ、ガキ」




ガキだから、なんなんだろう。
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