愛すと殺すと
「…お前は、行けよ」
「なにが?高校?」
こくんとうなずいた。
「そして、千晶を治してやってくれ」
その言葉に、違和感を感じた。
「なおす?」
「…この子は壊れてる」
口ではそう言い、でも身体は愛しそうに千晶の頭を撫でる。
なんだかちぐはぐだった。
「人を殺せと言われて当たり前に殺す。
人を殺して、僕に頭を撫でろという。
あの時、僕はじゃっかん引いたんだ」
あの時。
頭を撫でるのを一瞬ためらった、あの時か。
「我が妹ながら、怖いって思った」
そう言って、悲しそうに千晶を愛でる。
「…お前もな」
ふっと小さく笑った。
「俺も?」
「自覚はないか…。まあ、壊れてるぞ」
言い終わると、立ち上がった。
窓から溢れる月明かりに、きらきら反射する黒髪。
鳳紀と千晶の髪質はやっぱり似てるなあ、なんて思ってると。
「全部ここのせいだな」
遠くを眺めるような目をしながら、口にしたのは憂いの言葉。
「…なに?今日の鳳紀変だね」
いつもはこんな奴じゃないのに。
「そうか?
…あぁ、そうかもな」