愛すと殺すと
「バレー部なの?」
「いや、女バレとは試合をしないぞ普通?
迷子になってたのを助けてもらっただけだ」
「恥ずっ」
年下に助けられるとか…
「一見かなり素っ気ない人なんだが、人目をひく容姿にすっごい優しい性格の持ち主でな…!
もう女神っ!て感じ!」
無駄に熱い鳳紀に引く。
「聡明な人で、美しくて」
「……ん?」
「イメージカラーは白で…」
「…鳳紀?」
「…それはもう…とても透明感に溢れてて…」
おかしい。
鳳紀の様子が。
だんだん悲しそうに俯いてきていて、何かを堪えてるような感じになっている。
「……何かあった?」
「……悔しいんだ」
ガバッと顔をあげ、自嘲ぎみに俺を見た。
「――僕は穢れているだろう?
彼女にアプローチの一つもできない」
穢れている。
それは、己を差別する言葉だった。
「…全部、ここが悪いんだ」
繰り返すように月明かりに言葉を放つ。
「……きっと俺らは、生まれた時は幸せだったはずだよ」
ふと、そう思った。
両親の顔も覚えてないけど、きっと。
きっと、幸せだったはずだ。
「…それは、慰めか?」
「さあ?」
「もう寝ようか」
そう言って、地べたに横になる鳳紀と俺。
生まれた時は、布団だったのだろうか。