愛すと殺すと
そして、一ヶ月後。
学校がひけて、いつものように千晶と一緒に蒲公英園に帰る。
玄関の前でチャイムを鳴らすと、マザーもファザーもいなかった。
出掛けてるのかも、と鍵を探していると、不意にドアがあいた。
「千晶!陽!」
マザーでもない、ファザーでもない。
意外な人の姿がそこにあった。
「お兄ちゃん!?」
驚いたのか、でも嬉しそうに名前を呼ぶ千晶。
「鳳紀?お前部活…」
「これ!」
興奮ぎみに足を指差した。
「あ!どうしたの?痛そう」
千晶は悲しそうに顔を歪ました。
足首に包帯が巻かれていたからだ。
「挫いたんだ。
大したことはないんだが、今日は早退して安静にしろと言われてな。
6時間目を受けずに帰ってきた。
そしたら、マザーやファザーが出掛ける準備をしていたんだ。
どうやらマザーの親戚が亡くなったらしくて、それで…」
そこまで一気に言って、はあ…と息を吸って。
「2日間、帰らないらしいんだ!」
鳳紀にしては珍しく、はあはあと息をあらげた。
「だから?」
「お兄ちゃん大丈夫?」
妹でさえ心配するほど異様なテンションだった。