愛すと殺すと
「この間の事件の時、僕は駆けつけるのが遅かっただろう?」
「あぁ…そういやあ…」
「あの時、近くにいた記者に聞いてたんだ。
はっきり言うと、聞いたときに千晶が犯人だと一瞬でわかった。
このままここにいてはいけない、逃げ出さねば――そう思って、記者に。
あんがいすんなり調べてくれたよ。
ちょっとした情報提供で」
「なんの情報?」
千晶がやけにぼんやりとした口調で聞いた。
自分の事だと言うのに。
俺はと言うと、驚いていた。
鳳紀の凄まじい洞察力と、行動力に。
ぜひ見習いたい。
そして、それで千晶を守りたい。
「市川って客がいただろ、陽」
「あ、あぁ…」
市川?
…まさか。
「まさか、市川?」
「あいつ、結構いいお嬢様だからな――ネタになる」
「目立った記事とかはみてないけど…」
「僕が連絡するまで待てと記者に言ったんだ。
だって、マザーにバレたら怒られるだろう?」
「うわあ!お兄ちゃんすごいね!」
無邪気に、鳳紀の快進撃を褒め称える千晶。
す、すげぇ…!