愛すと殺すと
「無事…か」
「嫌だ!なんで鳳紀が!鳳紀!」
「…おち…け」
落ち着け、やけに兄らしく言われ、取り乱しそうになるのを抑える。
胸の中に何かが溜まっていて、叫び出したくなる。
でも落ち着かなくちゃ。
「死ぬ…だろうなあ…」
「死なないよ!絶対!」
叫びながらわかってた。
たぶん、これは死ぬ。
でも信じちゃ負けな気がして、そう言ったのだ。
「さっき…気づいた…」
「え?」
「お前…菅原にはなる…な」
「な、なんで?」
意味がわからない。
「お前は…千晶の兄にはなれない…」
兄には、なれない?
「だから、違う人に貰われろ…」
「な、何いって…」
「守ってやっ…てくれ…千晶は、女の子だから……だから、愛してやっ…て」
「何言ってるかわかんねえよっ!」
「いつか、わかる」
ふ、と楽しそうに笑って。
鳳紀は最後の息を吐いた。