愛すと殺すと


「無事…か」



「嫌だ!なんで鳳紀が!鳳紀!」



「…おち…け」



落ち着け、やけに兄らしく言われ、取り乱しそうになるのを抑える。


胸の中に何かが溜まっていて、叫び出したくなる。



でも落ち着かなくちゃ。




「死ぬ…だろうなあ…」



「死なないよ!絶対!」


叫びながらわかってた。


たぶん、これは死ぬ。



でも信じちゃ負けな気がして、そう言ったのだ。



「さっき…気づいた…」



「え?」


「お前…菅原にはなる…な」



「な、なんで?」



意味がわからない。



「お前は…千晶の兄にはなれない…」



兄には、なれない?



「だから、違う人に貰われろ…」



「な、何いって…」



「守ってやっ…てくれ…千晶は、女の子だから……だから、愛してやっ…て」



「何言ってるかわかんねえよっ!」




「いつか、わかる」




ふ、と楽しそうに笑って。







鳳紀は最後の息を吐いた。








< 93 / 245 >

この作品をシェア

pagetop