愛すと殺すと
真っ白い病院で安置室の前のソファに座っていると、話しかけられた。




「…君が、陽紀くん?」




野太い男の声に話しかけられ、伏せていた顔をあげる。


涙で濡れたのがもう渇いたのか、突っ張った感触が気持ち悪かった。



「はあ…」



声がしゃがれていてうまく出ない。


千晶は隣でずっと菅原さんに背中をあやされているが、涙一つ溢さず無表情だった。


「あー…なんて言っていいかわからないんだけど、お悔やみを言わせてもらう」


「……誰、ですか?」


無精髭を生やしてはいるが、若い。


誰だ、こいつ。




「鳳紀くんには記者として接していた、刑事の石橋亮だ」




「記者として…」


記者って、あの?


あの菅原さんを探すかわりに情報を流したっていう…あの?



「刑事って名乗るのと記者って名乗るのじゃあ、打ち解け方が全く違うから」



「…」


だましてたのか。


少し怒りを覚えたが、それをぶちまける体力は残っていなかった。



「もう何回も聞かされたと思うけど、確認のため、いい?」



「…はい」


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