刻んだ記憶
1・記憶を司るもの

今回は、この作品を開いていただきありがとうございます。

これを気に掛けた方は、人あるいは自分、知人の記憶について考えた事のある方だと勝手ながら推測させていただきます。


それでは本題に移らせていただきます。


その前に1つ、質問があります。


『あなたには、その事から何年も経つのに忘れられない記憶はありますか?』


人間には、脳という記憶を残す器官が存在します。
それでも、その器官は決して完璧なものではありません。

人は完璧ではないのです。


作品の表紙にも書いてあった
「人間の身体中の細胞は2~3年で全て入れ替わる」
と、いう事実。

これは実に人間にとって都合の良い機能です。
例えば、何か悲しい出来事…
家族が亡くなったと仮定しましょう。

この話を読んでる方には、もう経験したことのある方もいるかもしれません。

家族がいなくなる…

それは誰しもが必ず通る道です。
過去も、現在も、未来も…人間が生きる以上、避けられない道です。

分かっていてもその出来事は、想像を絶する悲しみです。
それでも人は、それを乗り越えてきたのです。
乗り越えたから、今の私たちが存在しているのです。

何故なら、先程も書いた細胞の入れ替わりという機能で人は全てを覚えていることはなく、悲しみを軽減させていきます。

よく後追い、なんていう事も聞きますがそれは弱いからとは一概に言い切れません。

細胞が入れ替わらず、まだ悲しみという記憶が消えない内に自分を絶ってしまう方も中にはいます。


脳と細胞、ここに刻んだ記憶は永遠に残るものではない。

脳は衰え、細胞は新しくつくられていく。


さて、ここでさっきの質問を思い出してください。

もうあの出来事から3年以上経っている。
なのに、忘れられない。と、いうことありませんか?

ない方もいるかと思いますが、ここではある方についての話を進まさせていただきます。


私にも、あります。

私はその出来事から5年、経過しています。

けれど、その時の場所、天気、気温、年月日、曜日…

自分の髪型、服装、性格、交通手段、気持ち…

そして、相手の顔、表情、髪型、服の色、服装、声のトーン、喋り方、歩き方、歩く速さ、食べ方、タバコの吸い方、お金を払う姿、言葉…

全てを覚えています。

メモや写真など、残るものは何一つありません。
それでも、相手の言葉の一言一句、正確に覚えているのです。

もう何年も経過していて、記憶力のある人間ではない私が何故こんなに事細かに覚えているのだろうか…

答えはどこにもありません。
考えても、調べても本当のことは分かりません。


なので、ここでは私の考えを言います。

それは

『脳や細胞ではない、どこかに記憶が刻んであるから』

と、いうものです。
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