君といる幸せ
「おい…律。ちゃんと説明しなかったのかよ」
「だって…花菜に何て言って良いか分からなかったし、奏大くんが伝えるかと思って…」
「…ハァ~…。全ての元凶は俺だな」
「どういうこと?政略結婚じゃないってこと?」
「あぁ…」
奏大が説明しようとしたその時。
診察室から医者が出てきた。
「っ…花菜は?」
「よほど強いショックを受けたのだろう。彼女は目覚めることを拒否しているようだ」
「っ!!」
「とりあえず、目覚めるまでの間、しばらくは入院してもらうことになる」
「まさか、また記憶が…」
「それは目覚めてみないことには何とも言えないな…」
「くそっ…」
「だからあの時も言っただろう?気を付けろって…」
「親父…何とかならないのか?」
「淳平いたのか。……そうだな。こればかりは、花菜ちゃんの精神力の問題だから何とも言えない。何処にも異常が見られないから、目を覚ますのを待つしかない」
この病院は淳平の実家であり、花菜を見ていたこの医者は淳平の父親であった。
先程の会話から、穂波や隼大が知らない何かがあるのだろうと、2人は勘づいていた。
しかし、それが一体何なのかは分からず、聞くに聞けないでいた。