君といる幸せ
「ごめん、柚。1限サボらせちゃったな」
「いえ…私は大丈夫です。…律先輩は大丈夫ですか?」
「ん?…あぁ、もう大丈夫だ。花菜が…妹が救急車で運ばれたのは知ってるよな?」
「はい」
「目を覚まさないんだ」
「えっ…」
「精神的なもので目を覚まさないんだ。けど…昔もそういうことがあって、その時は大切な人の記憶を全て消してしまったんだ。……だから、花菜が目を覚まさない今、もしかしたらまた昔みたいに花菜が忘れちゃうんじゃないかと思うと…凄く怖いんだ」
「律先輩……」
「柚にこんなこと話しても困るよな。ごめん…」
そう言った律の表情は、とても辛そうで、柚姫は思わず律の手を握りしめた。
「大丈夫です。きっと妹さんは目を覚ましますよ。だから、律先輩。そんなに不安そうな顔しないでください」
「柚…」
「私には律先輩みたいに格好いいヒーローにはなれないけれど、こうやって一緒にいることならできます。私じゃちょっと頼りないかもしれないけれど、頼ってください」
「…ありがとう」
律は照れ笑いしていた。
そしてそれを隠すように、再度柚姫のことを抱きしめた。