君といる幸せ
それから、本来の目的であった、律のお茶を柚姫に披露した。
律のお茶を飲んだ柚姫は、驚きを隠せず、目を思いっきり見開いた。
「す…すごい…。こんなの初めてです」
「そうだろう、そうだろう」
「私が点てるお茶とは違いすぎます。……まるで月とスッポンみたい…」
「律くんは雨宮流の次期家元だそうだ。お前も跡取りとしての自覚を出させるために、今回は無理を言ってこの機会を設けてもらったんだ」
「…私にはこんなお茶を点てることは出来ない。一生かかっても無理よ」
「柚姫…。それでもお前は、一ノ瀬流の第一後継者なんだ。これは変えられない事実だ」
康太の言葉に、柚姫は下唇を噛み締めた。
そんな柚姫の姿に気付いた律は、柚姫に声を掛けた。
「庭に出てもいいですか?先程、此方に来る時に、花が咲いているのが見えたので、ぜひ近くで見てみたいんですが…」
「あ…それなら私、案内します」
「あぁ、頼む」
律がそう言うと、2人は席を立ち、庭へと向かった。