君といる幸せ
庭へ着くと、律は柚姫に話し掛けた。
普段からの律からしてみたら考えられない行動であった。
「大丈夫か?」
「はい…。あの場から連れ出して頂き、ありがとうございます」
「別に…対したことはしていない」
「律先輩は優しいですね」
「俺が優しい?」
「はい。優しいです」
「……優しくなんかない。あんた同じ高校なら俺の噂くらい知ってるだろ?」
「律先輩、柚姫ですよ。それに噂って何ですか?」
「はっ?」
柚姫の言葉に、律は驚きを隠せなかった。
あれだけ校内で噂されている律のことを知らない存在がいるとは、信じられないといった表情で、律は柚姫のことを見ていた。