君といる幸せ
「なぁ、中身って何のお菓子?」
「あ…えっと、クッキーです」
「クッキーか。俺、和菓子も好きなんだけど、実はクッキーとかケーキ類好きなんだよね」
「私の手作りなので、律先輩のお口に合うかどうか…」
「へぇー…」
律はそう言うと、またベンチに腰掛けた。
するとラッピングの袋を開け、その中からお菓子だけを取り出した。
そして何を思ったのか、律はクッキーを食べ始めたのだった。
律の行動に柚姫は驚いた。
「…美味い」
「本当ですか?」
「あぁ。俺は嘘は言わない」
「律先輩のお口に合って良かったです…」
そう言った柚姫は、嬉しそうに微笑んでいた。
そんな柚姫の姿を見た律は、何とも言えない気持ちになった。
この感情が何なのか、答えを出せずにいる律。
そんな感情に気付かないように、自分の気持ちにそっと蓋をし、そのまま無言でクッキーを食べ続けた。
そして、普段一切女の子からの手作りのプレゼントを貰いもせず、口にも入れない律だったが、柚姫から貰ったクッキーだけは、全て食べてしまったのであった。