LOVEFATE~理由~

私は通話を終えたばかりのスマホをギュッと握り、

自然と起こしていた体をまたシートに埋めた



電話を切り終えた今も、
緊張のような動悸がする




「まりえは、なんでAV女優になったんだっけ?」


踏み切りで捕まり、

社長はブレーキを踏み
シートに深く凭れている



カンカンカン、
と煩いくらいに鳴っている警笛



踏み切の遮断機が閉まり、
電車が通過している




「――大学浪人して、
また次の年も落ちそうだから、

もうAV女優にでもなっちゃえ、って。

面接の時、社長にそう言いませんでした?」


答えたのは、
電車が通り過ぎてから



すぐに踏み切りが上がるのかと思いきや、

逆方向からも電車が来るみたい



カンカンカン、と頭に響く音


暗闇に滲む、警報器の赤いランプ




< 18 / 728 >

この作品をシェア

pagetop