LOVEFATE~理由~
夕飯に用意されていたのはすき焼き
「英梨、すき焼き好きだったから」
蘭子ちゃんにそう言われ、
実家を出てからの3年間、
一度もすき焼きを食べた事が無かったと気付いた
一人で食べるような料理じゃないから
「ああ、それでそっちの家、よくすき焼きしてたんだな。
しょっちゅうすき焼きのような匂いがしてたから。
高校の時とか、俺部活終わって腹減って帰って来るから、
匂いにつられて何度成瀬家に入って行きそうになったか」
私の横で、俊ちゃんは懐かしむように話している
ダイニングにある大きなテーブルで、
私の横の椅子には俊ちゃんが座っていて
私の目の前には、蘭子ちゃんが居て、
その横には亮ちゃんが居る
それがとても幸せ過ぎて、
好物のすき焼きなんかどうでもよくなりそう
さっきから口に運ぶけど、
殆ど味なんか分からない
泣きそうになるのを必死に耐える事で、
精一杯で
もしも、3年前にあんな事が無かったら
今、私は当たり前のようにこうやってこの場所に居た
自分が無くしたものの大きさや温かさを知り、
悲しくて仕方ない