LOVEFATE~理由~

夕飯に用意されていたのはすき焼き




「英梨、すき焼き好きだったから」


蘭子ちゃんにそう言われ、

実家を出てからの3年間、
一度もすき焼きを食べた事が無かったと気付いた



一人で食べるような料理じゃないから





「ああ、それでそっちの家、よくすき焼きしてたんだな。

しょっちゅうすき焼きのような匂いがしてたから。
高校の時とか、俺部活終わって腹減って帰って来るから、
匂いにつられて何度成瀬家に入って行きそうになったか」



私の横で、俊ちゃんは懐かしむように話している



ダイニングにある大きなテーブルで、
私の横の椅子には俊ちゃんが座っていて



私の目の前には、蘭子ちゃんが居て、
その横には亮ちゃんが居る




それがとても幸せ過ぎて、
好物のすき焼きなんかどうでもよくなりそう



さっきから口に運ぶけど、
殆ど味なんか分からない




泣きそうになるのを必死に耐える事で、
精一杯で




もしも、3年前にあんな事が無かったら



今、私は当たり前のようにこうやってこの場所に居た



自分が無くしたものの大きさや温かさを知り、

悲しくて仕方ない





< 417 / 728 >

この作品をシェア

pagetop