LOVEFATE~理由~
S総合病院に向かう車内は静かで、
誰も口を開かなかった
俊ちゃんが無事なのだと知っていても、
この目で元気な俊ちゃんの姿を見るまで安心出来ない
みんな、同じ気持ちなのだと思う
今も、不安に押し潰されそう
助手席に座る蘭子ちゃんが不安から俯いて泣いているのが、
真後ろの後部座席に座る私から見ていても分かる
そんな蘭子ちゃんの手を、
亮ちゃんが安心させるように握っている
私の横にはお母さんが座っていて、
その横に、俊ちゃんのおばさんが座っているけど
おばさんも、今も泣いているのが、
響く音で分かった
カーステレオからは、
ラジオのニュースが流れている
『――乗客乗員、全員無事に救助されました。
奇跡です』