LOVEFATE~理由~
「あ、後部屋!
数日以内にお前のタイミングで適当に出てってくれていいから。
いるものがあれば持っていけばいいし。
いらないものは置いてってもいいし」
「はい」
予定では、明日出て行くつもり
食器やちょっとした家具は置いていこう
「成瀬社長、今迄本当にお世話になりました」
私はこれでもかってくらいに頭を下げ、
顔を上げた
しんみりはしたくないが、
もうこれで最後だと思うと泣きそうになる
「英梨、じゃあな」
「はい」
最後に本名で呼ばれ、
耐えていた涙が溢れて来る
きたまりえは、
人前で泣かないような女だったけど
英梨である私は、
本当に涙脆くてダメだ
「社長…幸せに…なって下さいね…」
涙だけじゃなく鼻水も出るくらい、
私は涙を流した
「ああ」
社長はそんな私の頭を撫でてくれる
それはちょっと痛いくらい強い力で、
ふと見た社長の目も赤くなっていた
涙は流さないけど、
社長も泣いている
だけど、最後迄私を笑顔で見送ってくれた
「お前の私服スタジオから持って帰って来てるから、
その衣装の制服からいい加減着替えてから出て行けよ」
「――はい」