【BL】君と何処へ行こうか?
目が覚めたら、そこは見慣れない天井だった。
どこだろ、と疑問が頭に浮かび、その次に鈍い痛みが身体中を駆けた。
「………痛っ……」
「あ、目が覚めた?おはよう。」
のんびりと発せられた言葉に視線を横に落とすと、そこにはお茶を飲む澤村の姿があった。
慌てて身体を起こしたが駆け抜けた痛みに耐えられず、バランスを崩した。
「まだ動かない方がいい。うちの組の連中は屈強なやつらばかりだからな。」
クスクスと笑いながら澤村は僕の身体を元の状態に戻す。
「くそ………」
どうしてこんなヤクザなんかの世話に……。
「そんなに嫌いかい?」
「嫌いだね。……アンタ、無駄な殺生はしないと言ったな。」
「うん、言ったね。」
「そんなのは無理だ。アンタらは自分達が気付いていない間にも人を殺してる。罪の意識もなく。」
「…………」
「………僕の両親は、ヤクザの抗争に巻き込まれ死んだ。」
「……そうか。」
無関係だった。
幸せな家庭だった。
ただ、静かに暮らしていただけだった。
それなのに………
たまたま通りかかった、それだけの事で両親は命を落とした。
僕を守って死んでいった。
「…………すまなかった。」
澤村は詫びの言葉と同時に頭を下げた。
「な、んで……?」
「確かに俺達ヤクザもんは争いを止められない。そうやって無関係な人達を巻き込んだのは、事実だろう。……すまなかった、君の幸せを奪ってしまった。」
「アンタが………アンタが謝ることじゃない!そんな事をしても無意味なんだよ!」
澤村は関係ない。
それは分かってる。分かってて話したのに。
その頭は上がらなかった。
「俺も、ヤクザは嫌いなんだ。」
ようやく頭を上げて澤村は言った。
「は?アンタ若頭だろ?」
「うん、でも今のヤクザは嫌いなんだ。だから俺が変える。」
「……………」
「無駄な殺生はしない。みんなの幸せを守れる組にする。君みたいな子をこれ以上、増やさないために。」
極悪非道、血も涙もない……ヤクザとはそんな連中だと思っていた。
少なくとも僕が思い描くヤクザはこんなこと言わない。