刹那の笑顔
「あなた様が、お嬢様を運んでくれたんですか?
ありがとうございます。
いつか、お礼をさせていただきます。
とりあえず今は、これにて…失礼致します」
そう言って執事は扉を閉めると、車は出発させ、消えていった。
遼誠はただ呆然と車を見つめていた。
「あ、えっ?
えと…?」
先生は、苦笑気味に
「坂下はな…
ちょっと特別な身分の人なんだ…。
悪いな…、黙ってて…。
さぁ、教室に戻ろうか…」
「いや、こんな状況で戻れないっすよ!
どういうことですか?」
ゆっくりとさも、関係ないかのように話を先に進めようとする先生に、慌てて聞き返す遼誠。
「さ、さー、授業の続きしなくちゃな!
ほら、泉山も早く戻らないと欠席扱いにするぞ!」
「あ、ひでー!
教師の特権使うとか!」
少し不思議に思いながら、遼誠は先生を追いかけて教室に向かった。