刹那の笑顔
「だ、だがその兄は刹那とやはり一緒ではないか!
泣いてないんだろう?」
絞り出すように言うお父様。
そのお父様の反論にさらに大きな声で強く返す遼誠。
「だけどっ!その翌年。
俺は1回だけ見たんです。
兄と遊ぼうと思って、ふすまを少しだけ開けたんです。
すると、兄が写真を持って座り込んでいたんです。
兄は家族みんなで撮った集合写真を見ていました。
ポタッ
すると、写真の上に1粒の水滴が落ちたんです。
兄の目からは、その後とどめなく涙が流れていました。
俺は初めて兄が泣く所を見て動けなくなりました。
震える足で自分の部屋に戻ろうとしたら……」