刹那の笑顔
それを見た瞬間、俺はつんざくように泣き始めたそうです。
その後の記憶は、曖昧です。
最後に、兄は死んでしまったんだということだけが分かりました。
俺は、家族がみんないなくなり、1人ぼっちになった…ということが分かりました。
お葬式も、幼すぎて覚えていません。
でも、同情の声だけがすごく耳に残っています。
〝かわいそうに…まだ小さいのに〟
〝立て続けに亡くなってしまうなんて…〟
か・わ・い・そ・う?
余計な同情なんか、いらない。
誰も心からそんなこと思ってない。
うるさい。
うるさい。
あっちへ行け!
誰にも当たれない怒りだけが沸き起こりました。
ただ、お父さんとお母さんの骨が入ったお墓に兄の骨も一緒にゆっくり入っていったのだけ、覚えています。