刹那の笑顔
すると、刹那のお母様が立ち上がり、遼誠のことを優しく抱きしめた。
刹那は、遼誠のことを引き止めるように手をそっと握った。
「
辛かったね……、
悲しかったんだね……。
同情に聞こえる?
聞こえたなら、叩きなさい。
殴りなさい。
怒りをぶつけてごらんなさい。
私が傷つくなんて、気にしなくていい。
私の傷は消毒すれば、安静にすれば自然と治るのだから。
でも、あなたの心の痛みはきっとずっと一生つきまとうでしょう。
完全に癒すことは難しいでしょう。
でも、軽くすることはできる。
こんなことを言ってるけど…
私にはあなたの心の痛みの全ては、分からないわ…。
でもね、他の人よりは、分かっているつもりよ。
人を失う痛みは何にも変えられない程痛くて、辛いものよね……。
でも、あなたは今まで頼れる大人が少なかった。
だから、泣ききれてない。
だから…話してる時も今も少し涙が出ているんでしょう?
私は、偽物のお母さんよ。
あなたのお母さんでは
ない。
でもね……
頼ることも大事よ?」